帰ってきた丑の日モンスター(2号)
今日は土用の丑の日らしい。
昔は夏のうなぎが美味しくなくて(旬じゃないらしい)全く売れない。
試行錯誤しようにも二進も三進も行かなくなった鰻屋がいたそうだ。
そんな中、常連客にいたエレキテル(平賀源内)に
『ちょっと旦那、うなぎ全然売れないんだけど何とかなんない?発明とかで。』
とか相談したとかしないとか。
源内は何か知恵を渡せば鰻の代金なんとかしてもらえんじゃね?
って考えたのかは分からないけど、とりあえず丑の日に『う』の付く物を食べると良いっていう謎理論を展開し、それを暖簾などに大々的に書き込んだ。
調子の良い江戸っ子は多分それが粋だかなんだかだと思い込んで、こぞって鰻を食べまくる。
『ありがとう、旦那。これ受け取ってくれ!てやんでぇ!!』
とか何とか言いながら生きた鰻のプレゼント。
勢いあまったウナギは何の因果か源内の懐へと飛び込んでしまう。
自前のエレキテルと融合してデンキウナギになってしまった鰻は進化の勢いで神田川にダイブ。
大海原に放たれたウナギは東京湾のメバルやアオリイカとの死闘を制して真珠湾に。
パールハーバーでもシイラやカジキとか並居る強豪達との戦いを制し、慢心相違でアマゾン川へ。
多分それが240年前。
そんな因縁に翻弄された鰻好きがここにもいる。
うちの2号だ。
朝から
『うの付く物が食べたい!』
などと全身を畳みに打ちつけながら駄々をこねる。
何ということだ。最近はめっきり顔を出していなかった癖に。
こうなるとかなり面倒なことになるが、そんな簡単に鰻食べれると思うなよ!
源内も言ってたことだし、丑の日に1番あう『う』から始まる食べ物を探す旅に出ることとした。
とりあえず家にある『う』から始まるもの。
うにせん、梅干、ウイスキー。
だめだだめだだめだ、悪くないけど2号の満足には程遠い!!
くそ、なんも浮かんでこない。
ウインナーを細切りにして、うまい棒にぶち込んだらどうだろうか。
だめだ、歯が立たない。
仕方ないんで商店街に一緒に出かけることにした。
とりあえず、蒲焼の匂いでも嗅がせてみれば何とかなんじゃねって感じでうなぎ屋に。
もう、この時点で俺が2号を御せないなんて事は今までの付き合いで分かる。
こうなったら今夜はとことん粋になってやろうじゃねーかという気持ちと、
この前買った日本酒があることを思い出していた。
うなぎ屋には何組か客が入っていて、多分うな重であろうお櫃に箸を延ばして米と鰻のセッションを粋な感じで楽しんでいた。
ピアスまみれのバイトのねーちゃんと化粧ばっちりの女将さんが出迎えてくれて、
『持ち帰りできますか?』なんて聞いてみたら
『お土産?もちろん可能ですよ。何にしましょう?』だってさ。
そうだよ、寿司屋とかでもお土産っていうな。そっちのが粋だよな。
ちぇっ、失敗しちまったぜ。
とりあえず席に座って待ってみる。
まぁクヨクヨすんのは江戸っ子じゃねーって話だし食べたかった白焼きを注文。
悩んだんだけどね、そっちのが好きなのよ。
帰りに何となくスーパーに寄ってみる。
蒲焼が半額になっていて恐ろしく安い。
鰻寿司なんてのも100円引きになっている。
完全に粋を我が物にしている我々は呼吸をするがの如く粋な買物をして、
粋に会計を済ませて家路に着いた。
粋ってのが結局なんだか分かんなかったけど、美味しいよね。
日本酒も美味しくって2人とも笑顔だったからとりあえず良い日だったよ。
え?8月6日も土用の丑の日なの?
次は無理だろうな。
粋になるのは難しい。